乙女座の月の夜、宮沢賢治の冷たく透明な食べ物をいただきましょう~月天子と薄明穹~

中川多理人形写真集より『blind paper 盲目の地図』
町は二層の水のなか
そこに二つのナスタンシヤ焔
またアークライトの下を行く犬
さうでございます
このお児さんは
植物界に於る魔術師になられるでありませう
月が出れば
たちまち木の枝の影と網
そこに白い建物のゴシック風の幽霊
(宮沢賢治『古びた水いろの薄明穹のなかに』より)

月は6月1日1時16分に乙女座に移りました。
6月3日の朝まで乙女座のムードが続きます。

今はもう、月は上弦になり膨らみを増しつつありますが、
夜空にかかる三日月を黄水晶(シトリン)の薄明穹(はくめいきゅう)と詠んだ乙女座の詩人がいます。

日本を代表する素晴らしい詩人・童話作家の宮沢賢治は、乙女座に太陽と水星と金星を持っています。

今、東京でチャートを作ると西半球が強調され、お仕事など対外活動を忙しくされている方も多いと思うのですが、乙女座の月の夜にリラックスしながら、賢治の言葉に触れてみてはどうでしょうか。

写真は、人形作家中川多理さんの人形写真集『Costa d’Eva』より。

宮沢賢治は、知性がよく発達した子どもでした。乙女座らしい勤勉さで、実務的な知的好奇心を持ち、同時に文学青年。教師を辞めたあとは、土壌学と植物学の指導にあたりながら芸術の必要性を説きました。

東北の冬は今とは比べ物にならないくらい厳しいもので、その辛さを癒すこともあって、賢治は田んぼでベートー・ベンを聴きながら稲を植えていたと書いています。蓄音機があったのですね。それにしても、戦前に近所の青年に土壌学を教えながら芸術を説いていたというから、すごいです。それには、賢治のカイロンも深く関係しているのですが、カイロンのお話はまた今度・・・・・・

宮沢賢治は乙女座の5度に太陽を持ちますが、このサビアンシンボルは「自然霊や通常は見えない霊の代理者の存在に気づくようになる人間」で、人間を人間でないものの視点で見る、自然そのものを見る。根底にはシャーマニズムや宗教性があるのですが、賢治は18歳くらいから法華経に触れ、25歳の頃には布教のために東京へ行っています。

この深く裏側を探求するというのは、乙女座の5度にある蠍座の性質が反映されているのかもしれません。またシャーマニズムや宗教性は乙女サインが裏側で持っているものです。乙女サインというのは、押し込めても押し込められない人間の原始的な本能や、暴力性、闇、言葉にならない想いに向き合うことが課題のサインなのです。

中川多理人形作品 少年ー鳶、少年ー黒檀

中川多理人形作品
『少年ー鳶、少年ー黒檀』

乙女座の月の日に宮沢賢治の話なので、賢治の『月天子』という作品を紹介しましょう。

月天子

                      宮澤賢治

私はこどものときから
いろいろな雑誌や新聞で
幾つもの月の写真を見た
その表面はでこぼこの火口で覆はれ
またそこに日が射していゐるのもはっきり見た
後そこがたいへんつめたいこと
空気がないことなども習った
また私は三度かそれの蝕を見た
地球の影がそこに映って
滑り去るのをはっきり見た
次にはそれがたぶんは地球をはなれたもので
最後に稲作の気候のことで知り合ひになった
盛岡測候所の私の友だちは
――ミリ径の小さな望遠鏡で
その天体を見せてくれた
亦その軌道や運動が
簡単な公式に従ふことを教へてくれた
しかもおゝ
わたくしがその天体を月天子と称しうやまふことに
遂に何等の障りもない
もしそれ人とは人のからだのことであると
さういふならば誤りであるやうに
さりとて人は
からだと心であるといふならば
これも誤りであるやうに
さりとて人は心であるといふならば
また誤りであるやうに
しかればわたくしが月を月天子と称するとも
これは単なる擬人でない

・・・・・・しかればわたくしが月を月天子と称するとも
これは単なる擬人でない

占星術でも、月は人間を超えたものとして存在します。
擬人化ではないのですね。

月の神秘は古代よりあらゆる文明で信仰の対象となるものでした。

賢治は、こうした自然の神秘に対する畏敬の念と、科学による真理の探究になんら矛盾を持っていませんでした。

「宗教と科学と芸術の同一」を目ざした人でした。

それは、乙女座らしい勤勉さと実務的な知識と技術を、癒しの力に変えたかのように私には思えるのです。

中川多理人形作品 少年ー真ひる

詩というのは水星的なものですが、言葉が生まれるその裏側・・・・・・母体には「沈黙」があります。

ビジネス文書や軽いメールのやりとりなどは別ですが、美しい文章や人の胸を打つ言葉というのはあらゆる命の源である海に沈潜し、魚を捕ってくるようなものです。母なる海に潜ることは、子宮へ還ることにも似ている。そこに沈み込み、色鮮やかな魚、あ、あのグロテスクな魚はボードレールか夢野久作あたりがもう見つけたかな?・・・・・・自分だけの魚を見つけようと潜り続け、もちろんその言葉が鋭く稀で、美しいほど深海にまで潜らなくてはならない。

やがて沈黙の海から幸を手に入れた詩人は、抗いがたい力によって、その言葉を世に生み出す。産声をあげる。それはまるで魚座(母の羊水)の世界から牡羊座(誕生)の世界への移行のように。

賢治は、自分の物語が読む人たちにとって、本当の透き通った食べ物になることを願っていました。

魚座の世界から牡羊座の世界に誕生した言葉は、ヴィーナス金星が洋の東西を問わず海から生まれているように、牡牛座の金星を経て、そして詩として双子座の水星へ移る。このあたりは詩とサインの流れにどのような関係があるのか私にはわかりませんが、美が海から生まれていることも併せて、人の意識の中で何か関係しているように思います。

言葉の母体は「沈黙」。

母なる沈黙の海から賢治が引き揚げた稀なる、透明で冷たい深海魚を、乙女座の月の夜に皆さんも食してはいかがですか?

中川多理人形作品 Archetype  Anna
アドセンス

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2017-06-01 | Posted in 占星術, 本・音楽・映画No Comments » 

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